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パレスチナ最新情報:JSRメルマガ170815を転載

2017/08/18(金)
パ┃レ┃ス┃チ┃ナ┃最┃新┃情┃報┃170815
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読者の皆様、お盆はいかが過ごされたでしょうか。

アッバース大統領が最近導入した「サイバー犯罪処罰大統領令」が、ジャーナリ
ストや人権団体から反発を受けています。この新法令は、「パレスチナ国家の一
体性・公共の秩序・国家の安全を危険にさらすような、ウェブサイト」などを設
置したり、運営したりする者を罰するものですが、最低で1年以上、最高は終身
刑を課すことができることになっています。「国家の一体性」を損なうとは、
「公共の秩序」を乱すとは、どういうことか、詳細で具体的な文言がありません。
大統領府、あるいは司法当局の裁量一つで、いかようにも適用できる、いわば典
型的な政敵「弾圧立法」です。

アッバース大統領が率いるパレスチナ自治政府(ラーマッラー政府)は、ガザ地
区を地盤とするハマースと、ファタハから除名されたムハンマド・ダハラーン元
治安警察長官とを2正面の敵として、ガザ地区電力カット、そしてこの弾圧法を
武器に、まさに「仁義なき戦い」に打って出たかのような印象を与えています。

この大統領令で逮捕されたジャーナリスト7人が抗議のハンストに突入(10日)
後、間もなく釈放された(14日)のは、まだ、西岸政府の自制が働いているのか、
世論の反発が強かったのか、いずれでしょうか。

一方のイスラエルです。オルメルト元首相は汚職で投獄され、ことし刑期を終え
て釈放されています。イスラエルの閣僚や首相が疑惑事件で捜査を受けるのは、
あまり珍しくありません。ネタニヤーフ首相も汚職容疑などで警察の捜査対象に
なっていますが、「左翼とメディアが捜査当局に圧力をかけている」とネタニ
ヤーフ首相が演説(9日)。これは、「逆切れ」の感がありますね。

以下、8月10日以降のニュースです。


【8月9日(水)】

■ネタニヤーフ首相「左翼とメディアは私を貶めようとしている」

ネタニヤーフ首相は、自ら党首を務めるリクードの党員集会で演説、「左翼とメ
ディアは、何としても私を貶めようとしている」と非難した。「彼らは、捜査当
局に圧力をかけ、真実や法と正義に関係ないことで、私を起訴させようとしてい
る」と首相は語った。

同首相を巡る主な疑惑は2件。「ケース1000」は、ネタニヤーフ首相とその家族
が2人のビジネスマンから恒常的に贈り物を受け取っていたというもの。「ケー
ス2000」は、首相がイスラエル最大手のイディオト・アハロノート紙のオーナー
に対し、好意的な報道・評論を要請、その見返りに、アメリカの「カジノ王」シ
ェルドン・アデルソンが提供する電子版無料紙(*)に対する規制を持ち掛けた
とされる事件。

いずれも、警察が慎重に捜査を進めている。(8/10 Reuters)

*Israel Hayomを指すと思われる。親政府紙だが、イディオト・アハロノートと
は競合関係にあると考えられた。


【8月10日(木)】

■「サイバー犯罪処罰」大統領令で投獄のジャーナリスト、抗議のハンスト■

パレスチナ・ジャーナリスト組合の声明などによると、パレスチナ自治政府「サ
イバー犯罪処罰」大統領令違反で投獄されている、マムドゥーフ・ハマムラ(ア
ル・クドゥス通信)、ウマル・ナッザール(アル・アクサ・テレビ)らジャーナ
リスト7人が、抗議のハンストに突入した。いずれも、数日前、同大統領令違反
で逮捕されている。

7人は、6月に自治政府によって閉鎖された30のサイトで活動。いずれも、大統領
と対立する、ハマースやマハムード・ダハラーン元治安警察長官との関係が深い
メディアだとされる。

この大統領令は、「パレスチナ国家の一体性・公共の秩序・国家の安全を危険に
さらすような、ウェブサイトや情報テクノロジーを創り出したり運営したり」す
る者を、最低1年、最高は終身刑に処すことができるというもの。「国家の一体
性や安全、公共の秩序」などについて具体的な定義や説明はなく、人権団体は
「最悪のジャーナリスト弾圧立法」だと厳しく批判している。

政策提言グループ”7amleh”のナディーム・ナーシフ・ディレクターは、同大統
領令は「明確な説明なしにだれでも逮捕できる、パレスチナ自治政府史上最悪の
法令」で「西岸地区を暗い過去の時代に後戻りさせるものだ」と酷評した。
(8/13 Maan News, Haaretz)

Maan Newsの記事全文:
http://maannews.com/Content.aspx?id=778674


【8月11日(金)】

■国連担当官「イスラエルなど関係当事者は、ガザ人道危機解決に責任を」■

国連人道問題報道官、ラヴィナ・シャムダサニは、ジュネーヴで記者会見、「イ
スラエル、パレスチナ、ガザ当局が、ガザ住民の権利保護という責任を果たして
いない」と改めて3者を批判、とくにパレスチナ自治政府がイスラエルに要請し
た電力カットは、ガザ住民に対する「集団懲罰だ」と非難した。

ガザ地区は2007年以来イスラエルに封鎖され、エジプトも封鎖に協力。アッバー
ス大統領は、ガザ地区の行政権奪還のため、今年春から同地区に送電しているイ
スラエル電力社への支払いを削減している。このため、「保健衛生、飲料水に深
刻な影響を及ぼし続けている」とシャムサダニ報道官は語った。

ガザ保健省によれば、必須の医薬品の約40%が欠乏、とくにガン、腎臓病、シス
ティック・フィブローシス(*)に必要な薬品が不足しているという。
(8/11 Reuters, 8/12 Maan News)

*cystic fibrosis:生体の粘液分泌に異常をもたらす遺伝病。日本での症例は
少ないが、世界に広く分布するといわれる。

Maan Newsの記事:
http://maannews.com/Content.aspx?id=778657


<編集部注> ガザ地区の電力事情は、Haaretzの電子版が、毎日、同地区をい
くつかに分け、通電時間帯一覧を掲載している。
http://www.haaretz.com/middle-east-news/palestinians/1.800735


【8月12日(土)】

■西岸地区に29の仮設住宅■

パレスチナ自治政府の入植地監視官ガッサン・ダグラスによると、西岸地区北部
で、ほぼ時を同じくして、29の移動式入植者住宅が設置された。

ナーブルス南方ブーリーン村に近い「イツハル」入植地には11戸が、ナーブルス
西方クースィーン村に近くには9戸が設置された。イツハルの入植者は、極右と
して知られ、しばしばブーリーン村の住民とトラブルを起こしている。また、ト
ゥールカレム東方のエイナヴ入植地の住人は、入植地の境界に9戸を設置した。
いずれの入植者住宅も数時間以内に完成したという。

29戸の設置が、イスラエル当局の許可を取ったものかどうかは不明。仮設入植地
(アウトポスト)の設置は、最近までのイスラエル法では禁止されていたが、今
年の初めの立法で、アウトポストを事後承認する道が認められている。
(8/12 Maan News)


【8月13日(日)】

■ピース・ナウ「JNFが西岸地区の私有地買収に着手」と非難■

イスラエルの平和団体「ピース・ナウ」の同日のサイトによると、「ユダヤ・ナ
ショナル・ファンド」(JNF)は、「ユデア・サマリア(*)不動産取引責任
者」を置くことを公表した。ピース・ナウによれば、JNFは、ここ数年間停止し
ていた西岸地区でのパレスチナ人私有地の取引を開始することになる。ピース・
ナウは、JNFが「入植者に奉仕し、(パレスチナ=イスラエル紛争の)二国解決
の可能性を妨げる、きわめて不正な事業を再開しようとしている」と、厳しく批
判した。(8/13 Peace Now)

*ユデア・サマリア:西岸地区の聖書名


【8月14日(月)】

■PA大統領令違反で逮捕のジャーナリスト5人を釈放■

パレスチナ司法当局は、サイバー犯罪処罰大統領令違反(公共の秩序に脅威)で
逮捕されていた、マムドゥーフ・ハマムラ(アル・クドゥス通信)、クタイバ・
カーセム(フリー)らジャーナリスト5人を釈放した。5人は保釈金を積み不起訴
処分となった。

カーセムは、Haaretzの取材に対し、「自治政府の治安当局に逮捕されたことは
何度もある。自治政府の気に入らないことを書いたからだ。いつも、数日後に釈
放された。今回、彼らは、私の逮捕を説明できる一編の記事も示すことができな
かった。これは政治的逮捕だとすぐわかった」と語った。(8/15 Haaretz)


【8月15日(火)】

■イスラエル、イスラーム指導者を逮捕「テロを扇動」■

イスラエル警察は、暴力・テロを扇動し違法な組織活動を行ったとして、「イス
ラエル・イスラーム運動」北部支部の指導者ラーエド・サラーハ師を逮捕、自宅
を捜索、コンピュータ2台などを押収した。

イスラエル・イスラーム運動は、イスラエル市民権を持つパレスチナ人らイス
ラーム教徒の組織だが、北部支部だけが2015年に非合法化され、サラーハ師が逮
捕された。同師は、1月に釈放されたが、説教で暴力を扇動したとして再逮捕さ
れた。

北部支部は、ハマースとの関係が深いとされる。サラーハ師の親族は、逮捕は
「政治的迫害の現れだ」と語った。(8/15 Haaretz)


(出典:Haaretz、Maan News、Peace Now、Reuters)


<注1> 2007年以来、事実上分裂状態にあったパレスチナ自治政府は、2014年
6月、統一内閣を発足させました。統一合意では、暫定政府のもと、6ヶ月以内
にPLC(パレスチナ立法評議会)と大統領選挙が行うことになっていました。
期限を大幅に過ぎましたが、選挙準備も、西岸・ガザ地区の行政機構の整理統合
も進んでいません。逆に、ラーマッラーとガザの両政権の関係悪化が進んでいま
す。関係者のタイトルなど、一貫性に欠けることもあると思いますが、ご了承く
ださい。

<注2> 2012年9月の国連総会決議で、パレスチナは、国連の「オブザーヴ
ァー国家」として承認されました。「パレスチナ国家」「PLO」「パレスチナ
自治政府」の関係がどうなるのか、国際法的にも微妙な問題があります。パレス
チナの組織やパレスチナ人の役職などをどう表現するか。この点についても、そ
の都度判断することにします。

<注3> 各ニュース記事末尾の(カッコ)内は、その主なニュース源です。
ずしも、元の記事の翻訳や抄訳ではありません。とくに断らない限り、Webサイ
ト上の情報です。日本語ニュースの場合、固有名詞の表記などは、編集者の判断
で変えることがあります。


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■□ 公開講演会 □■
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JSRでは、以下の通り、講演会を開きます。どうぞお越しください。

■テーマ:「アラブの詩─ジャーヒリーヤからダルウィーシュまで」(仮題)
■講師:師岡カリーマ・エルサムニーさん

■日時:8月24日(木曜日)18:30~20:30
■場所:ハロー貸会議室新宿曙橋3F
   〒160-0001 東京都新宿区片町1-13-1 第3田中ビル  3階
   都営新宿線 曙橋駅 A4出口徒歩3分
   JR中央・総武線 市ケ谷駅 徒歩10分

■講師紹介: 師岡カリーマ・エルサムニー
1970年、東京にてエジプト人の父と日本人の母の間に生まれる。カイロ大学政治
経済学部卒業後、ロンドン大学で音楽学士を取得。現在、NHKラジオ日本でア
ラビア語アナウンサーを務めるかたわら、アラブの文学や歴史に関する執筆活動
も行っている。慶應義塾大学・獨協大学講師、NHKテレビ講座「アラビア語会
話」元講師。現在、東京新聞で「本音のコラム」土曜版を担当中。《著書:『恋
するアラブ人』『イスラームから考える』『変わるエジプト、変らないエジプ
ト』(白水社)ほか、来月は小説家梨木香歩氏との共著『私たちの星で』(岩波
書店)を刊行予定》

★アラブの文化の核心はアラビア語。そのアラビア語を磨き上げたのが、詩です。
「アラブの詩」抜きに「アラブ文化」を語ることはできません。日常生活から社
会・政治にかかわるあらゆることが、「詩」という形で表現されました。

「ジャーヒリーヤ」は「無明時代」と訳されますが、アラブにとっては、ムハン
マドを通じて神のメッセージが伝えられる以前の時代を意味します。つまり、イ
スラーム暦元年(622年)よりも前になるので、日本でいえば「大化の改新」よ
り前のこと。マハムード・ダルウィーシュ(1941年~2008年)は、世界的に知ら
れたパレスチナの詩人です。

いうならば、「ジャーヒリーヤからダルウィーシュまで」とは、アラブ文化のす
べて、アラブの歴史全体を包み込む時代ということになります。この大海から、
私たちがくみ取ることのできるものは何か。アラブと日本双方の文化に精通する
カリーマさんにお話しいただきます。

■資料代:¥800
■事前申し込み: 不要です。定員が限られているので、早めにおいでください。
■主催: アル・ジスル-日本とパレスチナを結ぶ(略称JSR)


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■□ 公開学習会 □■
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<NAJAT講座 第4回>
■テーマ: 核もミサイルもない北東アジアへ──私たちにできること

■日 時: 8月29日(火) 19時~21時
■会 場: 文京シビックセンター 5階AB会議室
(後楽園駅2分、春日駅3分、水道橋駅10分)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civiccenter/civic.html


■講 演: 田巻一彦さん(ピースデポ代表)
■報 告: 杉原浩司(NAJAT代表)

■参加費: 800円(資料代)

米朝による威かくの応酬が激しさを増しています。緊張の根源にある冷戦構造が
いまだに残る北東アジアは、軍拡競争の中にあります。北朝鮮の核・ミサイル開
発の進展や中国の軍備増強の一方で、在日米軍や自衛隊の増強も図られています。

自民党の安全保障調査会が6月に稲田防衛相(当時)に提出した、中期防衛力整
備計画に向けた「中間報告」には、軍事費の増大や「ミサイル防衛」の強化(陸
上配備型イージス艦導入など)、また敵基地攻撃能力の保有といった危険な内容
が満載です。この提言を主導した小野寺五典議員が防衛相に就任し、安倍首相は
「防衛大綱見直し」の前倒しを指示しました。

安倍政権は核やミサイルの「脅威」を声高に叫ぶ一方で、核兵器禁止条約に背を
向け、被爆者をはじめとする市民の怒りを買っています。政府が進める軍拡政策
は「軍産複合体」を喜ばせることはできても、北東アジアの平和の構築にはつな
がりません。

では、どうすればいいのでしょうか。「北東アジア非核地帯」など具体的な対抗
提言を積み重ねてこられた「ピースデポ」の田巻一彦さんをお招きして、核もミ
サイルもない北東アジアに向けて何ができるのかを探りたいと思います。

■主催: 武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)
メール anti.arms.export@gmail.com
FAX 03-5225-7214
TEL 090-6185-4407(杉原)

<アル・ジスル-日本とパレスチナを結ぶ>は、NAJAT構成団体のひとつです。

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編集人:奈良本英佑
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