HOME活動報告 一覧 > BE FREE!対談:鈴木聡(映画「BE FREE!」監督)×高橋美香(写真家)

活動報告 詳細

BE FREE!対談:鈴木聡(映画「BE FREE!」監督)×高橋美香(写真家)

2017/09/01(金)

2017.8.20の中野上映会後、長年パレスチナを撮り続けていて、写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』(ビーナイス)、「パレスチナ・そこにある日常」(未來社)、「それでもパレスチナに木を植える」(未來社)などの著作でも知られる写真家の高橋美香さんと映画「BE FREE!」監督の鈴木聡さんがトークライブを行った。
 
鈴木聡(監督):以下、鈴木
高橋美香(写真家):以下、高橋
 

 

◎きっかけは第一次インティファーダ

 
鈴木:ぼくは最初全然パレスチナ問題についてテレビのニュースでしか知らなかったんですね。日本人の多くはそうじゃないですかね。だから、ぼくがパレスチナに行くって言うと、会社の同僚らのリアクションがおかしいんです。最後のお別れのようにじっと目を見て「…気をつけてね」とか、「オレンジの服を着させられるなよ」とかね。とにかくぼくのことを見つめる時間がやたら長い(笑)。

 

イスラエルとかパレスチナって、あのISの首切り事件とは全然違う場所なんですけどね。それぐらいパレスチナや中東に興味がない。そんな日本人が多い中、美香さんはもう長いこと向こうで写真を撮り続けてらっしゃるんですけど、そもそもどういうきっかけがあったんですか?
 
高橋:テレビのニュースで第一次インティファーダ※のことを知ったんですよね。母親のそばでテレビのニュースを見てたんです。その時、パレスチナの自分たちと同じくらいの年の子どもたちが兵士に投石してる映像が流れてきたんです。それにものすごくショックを受けて。
 

「自分は退屈しのぎに広島の田舎で悪さばっかりして遊んでいるのに、パレスチナっていうところの子どもたちは生きるか死ぬかっていう状況の中で戦車に向かって石投げてるよ、同年代だよ」っていうのが衝撃で、「いつかこの人たちに会いに行ってみたいな」と思ったのが、一番最初のきっかけです。


※第一次インティファーダ…イスラエルの占領地においてパレスチナ住民により組織的に展開された占領支配に抵抗する運動。1987年12月、ガザ地区の交通事故が口火となり、その後占領地全域を覆う組織的な抵抗運動へと発展した。パレスチナ側がおもに投石や道路遮断、イスラエルへの納税拒否、イスラエル商品の不買などの手段に訴えたのに対し、イスラエル側は武力的な鎮圧を強行したため、死者は1500人,逮捕者は延べ5万人をこえ,国際的にも大きな反響を呼んだ。

 
鈴木:すごい…筋金入り…ですね。
 
高橋:いえ、ずっとそう思い続けてたわけでもなくって。ただ進路決める時とか要所々々でふっと思い出す。その程度だったんですけど、なんとなくそっちの方にジグザグジグザグしながら進んで行ったという感じなんです。
 
鈴木:初めて行った時、ぼくも前もってガザが瓦礫だらけとかそういう映像は見てたんです。それで正直「かわいそうだな」とは思いましたけど、主体的に関わろうとは思わなかったんです。でも、高橋さんは「気になってしょうがない」という感じだったんですか?
  
高橋:「気になってしょうがない」という程でもないですよ。
 
鈴木:で、大学終わって…?
 
高橋:大学終わってパレスチナに行こうと思ったんですけど、自分で言葉を喋れなくて全部通訳を介してというのが嫌だったので、とにかくアラビア語を使えるようになろうと。大学でも中東政治を学んでいたので、だったらエジプトは隣なので「住んじゃえ!」って留学して、そのエジプトに住んでいた時にパレスチナに通い始めたのが一番の初めです。
 
鈴木:初めて見た時の印象はどうでしたか?
 
◎パレスチナ人は元気で明るく優しい

 

高橋:一言で言うのが難しいですね。いろんな印象があったんですけど、「みんな思ったより元気で明るいな」というのが最初の印象でした。
 
鈴木:それはぼくも全く一緒ですね。ニュースでは「パレスチナがテロ攻撃をしてイスラエルとやりあっている。」と聞いていたので、パレスチナ人についてなんとなくテロリストというイメージがあったんです。だから映画の中でもベツレヘムに入る時はちょっと身構えている。
 
高橋:あれは身構えながら撮られた映像だったんですね。
 
鈴木:そうですね。疲れてフラフラだったのでちゃんと身構えられているのかどうなのかわかりませんでしたが(笑)。そのぐらいぼくは無知で。
 
高橋:うんうん。
 
鈴木:美香さんが今、仰ったように、ぼくも一番最初に思ったのが、とにかく現地のパレスチナ人が明るいということ。
 
高橋:元気ですよね。
 
鈴木:毎年夏のベツレヘムフェスって、パレスチナ全土から3、4万人集まるイベントがあるんですけど、日本の夏祭りの準備風景みたいな感じでみんなすごく明るいし、むこうから声かけてくれるんですよね。「コーヒー飲まない?」ってよく言われませんか?
 
高橋:言われます。三回くらい断ってもまだ誘ってきたら受けてもいいみたいです。私、最初そういう事情を知らないで一々お誘い受けるたびにお呼ばれしてたら胃がコーヒーでタプタプになっちゃって(笑)。その悩みをパレスチナ人の友達に言ったら、「お前な、三回くらいは断るもんだよ」って言われて。やっぱり日本人と一緒で「本音と建前」ってあるみたいです。
 
鈴木:あ、そうなんだ(笑)。
 
高橋:でも、日本人に対しては、割と本音で言ってくれてると思う。パレスチナ人同士だったら三回断る程度が礼儀らしい、と聞きました。
 
鈴木:それから色々くれますよね。
 
高橋:はい。くれますね。
 
鈴木:ファラフェルっていうあの有名な…
 
高橋:豆のコロッケみたいなやつですね。
 
鈴木:それを「おいしそうだな」って店先で見てたんです。たいがい知らない国に行くと、無理矢理売りつけられるじゃないですか? だからくれるって言われても、「これ食べたら後からふっかけられるのかな?」と思ってると、「タダでやる」って言われるんですよね。
 
高橋:ねー。私はエジプトに住んでいたんです。あそこは観光国なので、ボッたくる、騙す、金を巻き上げるみたいなことがよくあるんですね。でも、その警戒心のままパレスチナに行くと、あまりに自然に自分の得を求めないで、善意の塊で「ウェルカム!」と歓迎してくれる感じなので驚きますよね。
 
鈴木:驚きます。
 
高橋:エジプトだと「善意の影には何かあるぞ」って警戒しなきゃいけないんですけど、パレスチナだとあんまりそういうのがない。
 
鈴木:ですよね。ちなみに、この会場にアースキャラバン呼びかけ人の遠藤喨及さんがいるんですけど…
 
高橋:お顔拝見しました。
 
鈴木:非常に忘れものの多い方で(笑)、今回は財布でしたっけ?
 
遠藤:いいや、いろいろ忘れます(笑)。
 
鈴木:それがちゃんと届くんですよ。外国で財布なくしたら、中身戻らないでしょう。今年はパスポートをなくした人がいて、それも無事に届きました。
 
高橋:すごい!
 
鈴木:だから、今日映画を見て頂いたみなさんはパレスチナの印象がだいぶ変わったかなと思うんですけど。
 
高橋:はい。
 
鈴木:ぼくも高橋さんには今日初めてお会いするので、知らないことがいっぱいあるんです。もう15年以上、20年近くになりますか、パレスチナとのつきあいは?
 
高橋:はい。
 
鈴木:現地の人とやりとりされて、ガザの中にも行かれてて、お友達なんかもたくさんいらっしゃるんですよね?
 
高橋:はい。
 
鈴木:もし、よろしければ、思い出に残るエピソードとか、思い出に残したくないエピソードとか、あればお話し頂けますか?

 
高橋:話したいことは山ほどあって、それを話し始めると、1時間あっても2時間あっても足りなくなっちゃうのと、しかも何を選ぶかで話の方向性が全然違ってくるので難しいんです。たまたま昨日、ジェニンという難民キャンプに私の居候先があって、その家族の息子の一人が逮捕されたんです。

 
軍がジープに乗ってキャンプに侵入してくるんですけど、それに抵抗して石を投げるとか、地下の武装組織もいる地域なので銃を手にして応戦する人たちもいるんです。詳しいことはまだわからないんですけど、イスラエル軍に逮捕されて連行されて、三人が実弾で打たれて重傷というニュースが昨日入りました。
 
鈴木:いやー…(言葉を失う)。

 

高橋:昨日捕まったのはその居候先の長男のカマールなんですけど、今日、八月二十日っていうのは、そこの次男のムハンマドの親友だったマジドが射殺されて今日で四年なんです。でも、その話を始めるとものすごく長くなるので、彼らがどうしてそういう目に遭うのか、どういう想いで難民キャンプで暮らしているのかについて話します。

 
難民といっても生まれた時から難民なので、おじいちゃんが奪われた故郷っていうのは、イスラエル側にあって一度も訪ねたこともないんです。そういう中で70年近くも同じ事が見過ごされて放置されてきた中で権利、尊厳を奪われて、これでは生きていけないということで抵抗の道を選ぶ人がいます。

 

そういう人たちをイスラエル側はテロリストと呼んで弾圧するんですけど、そういう人たちがどういうふうに生きているかっていうのは、私の本を買って下さいとは言いません。是非、図書館でリクエストして下さい。本にたくさん想いを込めてあるので読んで頂けるとうれしいです。
 
鈴木:えー、なんにも言えなくなっちゃうな…。
 

◎平和活動の中で感じる自己嫌悪、無力感…それでも悩みながら続ける

 
高橋:こういうことを軽く言ってるんですけど、家に帰ってからすごく自己嫌悪に陥るんですよね。やっぱりこの場で泣きながらっていうのは嫌なので。思い出してつらい気持ちになることもいっぱいあるんですけど、思わず思い出し過ぎて泣き出してしまうこともあるんです。でも、なるべくそのへんは心を遮断して、じゃないですけど、人前では気を付けてます。
 
鈴木:ぼく今すごく同じ思いでいます。撮影してると、自己嫌悪になってくるんです。
 
高橋:わかります。
 
鈴木:ぶっちゃけ、今みたいな話って現地では普通にあります。昨日までの知り合いが逮捕される。殺される。ぼくの浅い経験でもそういうことがありました。テント・オブ・ネイションっていうところで、映画の中で「イスラエル人もウェルカムだ」と言ってた人の場所なんですけど、周りは入植地がたくさんあって、オリーブの木がイスラエル軍に1500本切られたんですけど、それでも頑張るって言ってた人なんです。
  
そこが去年行ったらもうそこへの道が塞がれてるんですよ。で、その道のところにでっかいブロックが置かれて車が通れなくなっていて、ゴミ捨て場になっている。入植者がそこにゴミを捨てるんです。テント・オブ・ネイションの人はそこを通れない。「なんだこの変化は?」と思いました。で、今年行ったらもう全く入れなくなってる。そういうのを見てると、こうして撮っていることが何の役にも立ってないと…。
 
高橋:それは感じます。うん。
 
鈴木:ですよね? 映画にしてご覧頂いたり、フェイスブックとかで広めてもらったり、シェアしたりするんですけど、やってることがすごく自己満足なんじゃないかって。自分は「いいこと、平和のためにやってるんだ」っていう気持ちで動いているけど、そういう結果がでていて、それでいいの?ただの偽善じゃないのって思います。
 
高橋:それは毎日思います。特に昨日みたいにカマールが捕まったというのを聞いた時なんか、私が本で書こうが、なんだろうが、それは自己満足でしかなくって、彼らの人生は続いているんだなってすごく思います。でもやっぱりゼロではないし、自分の特技を使って何かをしていかないと何も変わらないし、というのは映画からも感じたんですよね。みんなが自分のできることを持ち寄って、無駄かもしれないけど行動していく。それがだんだん周りに広がっていくっていうのはやっぱり、ゼロではないと感じました。その繰り返しで悩みながらやっていくしかないんだろうなって思いました。
 
鈴木:美香さんが笑顔で話せば話すほど、なんか切ない…。
 
高橋:家でよく落ち込みます。
 
鈴木:美香さんは昨日の話だけじゃなくて、他にもたくさんそういう経験をしていて。美香さんは現地のことをよく知るためにアラビア語を話せるけど、ぼくなんか英語もアラビア語もなにもできなくて(笑)、だからまだ彼らと距離を保っていられるんですよ。美香さんのような距離になった時に自分で耐えられるかなって思います。それで美香さんの写真を見てすごく興味深いなと思うのは、パレスチナの写真ってもっとセンセーショナルに撮れるんですよ。
 
高橋:はいはい。
 
鈴木:そこら中にひどいことが転がってるじゃないですか。もっとひどい絵だったり。もっと苦しんでる人だったり。逆にこんなに明るいんですよって人を撮るとかね。写真としてはそういう方がインパクトがあるような気がするんですけど、美香さんの写真はすごくね、一言で言うと“普通”に撮るんですよね。
  

◎パレスチナ人の普通さを世界の普通の人たちに

   
高橋:あ、そうそう。普通は一番大事だと思っていて。なんでそう思ったかっていうと、今までパレスチナの状況が70年、自分が勉強初めてからもう20年ぐらい経ってますよね。その間もずっと状況が変わらない。なんで変わらないかっていうと、結局、一部の「意識高い」人たちだけが関わって行くだけだから「普通」の人には何にも…。
 
普通っていう言い方も変ですけど、うちの家族なんかいい例だと思います。毎日ただ会社に行って疲れきって帰ってきて、寝るだけ。日曜はもう楽しい事だけ聞きたい。悪いことなんか聞きたくもないし、しんどいことなんかかかわりたくもないっていう「普通」の人。そういう「普通」の人に(パレスチナの窮状を)伝えるためには、「彼らは普通の人たちなんだけど、それを阻害するものがあって、そういう状況に置かれているから普通じゃないように見える」っていうのを伝えないと駄目なんじゃないかって。
 
鈴木:あー、なるほど。やっぱりそういう意図があって“普通に”撮ってるんですよね。なんか自分の昭和の子ども時代の写真みたいに受け取れるんですよ、美香さんの写真は。パレスチナ人はぼくたちとなにも変わらないっていう感じ。ぼくもまだこういうことを伝え始めて日が浅いんですけど、会場にいる皆さんはこういう内容でも来るっていうことで相当意識が高いですよね。嫌な言葉ですけどね、「意識高い」って。普通は見ないで済ませたい、だけど、意識高い人だけだと行き詰まりますよね。
 
高橋:そうですね、グルグル。全体に何の変化もない。
 
鈴木:たとえば、この映画と違う上映会とか行くと、また同じようなメンツっていうことがあって。
 
高橋:そう。いつも同じような顔ぶれで集まって話して。それを打破したい。
 
鈴木:パレスチナって67年間変わらず、どころかどんどんひどくなっていて、世界的にも忘れ去られるんじゃないかっていう恐れはあります。ただぼくは全然絶望してなくて、たとえば、南アフリカのアパルトヘイトとか、黒人に差別的な人種隔離政策がありましたけど、それも国際的な圧力とか「それはおかしいよ」っていう声が多くあれば、結局…。
 
高橋:変わりましたよね!
 
鈴木:ベルリンの壁だってそうですよね。誰かがカンカンやってちょっと崩れたら、その日に全部崩れるみたいな…こともあって、希望は失ってないですけど、そのためには多くの人が知らないといけないですよね。
 
高橋:そうですね。まずそこからですよね。
 
鈴木:南アフリカのアパルトヘイトは黒人に対する差別が明らかに悪いっていうのが、そのまま伝わって来るので、国際世論も動きやすいんです。だけど、パレスチナの場合は、さっきも言いましたけど、「パレスチナ人がテロをしました。それにイスラエルが報復しました。」っていう切り口のニュースばっかりなんですよね。だから日本人含めて世界中の気持ちとしては、「そりゃテロするのは悪いんじゃないの?」っていう感じでしょう。テロと言っても報道されることの裏もテロに至る理由もあるんですが、今、テロとつけば反射的にテロする方が悪いという風潮でしょう。だからなかなか国際的な圧力が高まりにくいというのがネックだと思う。そういうことについてはどう思われますか?


◎誰もが迫害者に成り得る

 

高橋:そうですね、ユダヤ人の方々はあれだけひどい目にずっと遭わされ続けて来た。彼らが「自分たちの身を守るためには、強い国が必要だ」という言い分を非難できないヨーロッパ人の感情とか、これまでの大きな流れの中で、パレスチナ人が犠牲にされてるっていうのをすごく感じますよね。 でもよくよく考えてみれば、ダニーさん※も仰ってましたけど、兵役で45歳になるまで毎年一ヶ月予備役につかされて、捨て駒みたいに時には命を奪われてというイスラエル人も被害者だと思うんです。ずっと「洗脳」教育で「あいつらはテロリストだから、動物以下だから、先にやっつけないといけない」とか、植え込まれてずっと成長すれば、自分もパレスチナ人を迫害するようにならないとは言い切れないですよね。
  
※ダニー・ネフセタイ…日本在住37年のイスラエル人で祖国での従軍経験もある。家具作家の傍ら、平和をテーマにした講演や反原発イベントの企画・運営も行う。イスラエルで受けた偏った教育や従軍経験を元に書いた「国のために死ぬのはすばらしい?」(高文研)は口コミで反響を呼んでいる。
 
鈴木:ほんとに。ぼくもこの映画の中で、編集する時にすごく気をつけたことがあって、編集の仕方によってはすごくイスラエル人を悪く描くこともできるんですよね。その方が見る側にはカタルシスがあるというか。
 
高橋:見る方にとっては、その方がわかりやすいですよね。
 
鈴木:ハリウッド映画的に。パレスチナ人が悪いと思ってたら、実はイスラエル人が悪かった。「こいつらが本当は悪い奴らなんだ!」っていう風に作れば、すっきりしていいなと思うんですけど、美香さんが仰られたようにイスラエル人もやっぱり犠牲者だと思うんですよ。明らかに。イスラエル側を歩いていると、兵役につく前の女子高生が軍服着て歩いてるんですけど、ただのかわいい女子高生なんですよ。カメラなんか向けると、「イェーイ!」って。
 
高橋:めっちゃかわいいですよね。美人多いし。
 
鈴木:そうそう、そうなんですよ。で、そんな子が映画に出て来た神殿の丘とかヘブロンとかそのあたりに配属されると、目が変わるんですよ。獣の目に。
 
高橋:変わりますよね。うん。
 
◎迫害する側もまた病む  

 

鈴木:その三年間をイスラエル人みんな経験してしまったら、元に戻るのは相当大変だろうなと。しかもイスラエル人は全員徴兵制なので、変な話、そのへんを歩いているおばちゃんも昔は機関銃持ってたんですよね。だから全員が何かしらパレスチナ人に対して悪いことをしていて、共犯関係であり、罪悪感があるせいか、自殺も多いですよね。
 
高橋:そうそう。家庭内暴力とか多いし、車でものすごいスピード出して激突したり、一種の自殺ですよね。そういう話はイスラエルの友達からもよく聞きますよね。
 
鈴木:普通の感覚だとパレスチナとイスラエルとどっちが安心、安全だと思うかっていうと、パレスチナの方が危険なイメージがあると思うんですけど、我々アースキャラバンメンバーの感想だとパレスチナの方がずっと安心なんですよ。
 
高橋:そうですね。イスラエルが攻めて来てなければ、ね。すごく治安いいし。
 
鈴木:パレスチナはやっぱり、散々ひどい目に遭っているので、お互い助け合って温かいんですよ。これがちょっと検問所越えると、すぐイスラエルなんです。我々はスムースですけど、パレスチナ人は全然5時間、10時間並んだりしないといけないですけど。そしてイスラエルに入ると、まあ、町は荒れてますよね。
 
高橋:荒れてますね。
 
鈴木:それから、アル中で夜中ぶつぶつ言いながら歩いている人いっぱいいますよね?
 
高橋:いますねー!エルサレムには多いですよね。
 
鈴木:きっとね、あれは多分…。
 
高橋:…耐えられないんだと思います。自分が見てきたこととか、してきた事とか、しなければいけなかった事とか、自分の意に反してやらなければいけなかったこととか、もう耐えられないんですよね。ある意味、そうなっちゃう人ってまともですよね。
 
鈴木:獣でいる必要がなくなっても、切り替えられなくなってしまった自分みたいな。今の話で思い出したんですけど、これが特殊なことだって思ってしまうのも危険なことだと思っています。イスラエルとパレスチナの問題みたいになるの嫌だなと。こういうことはけっこう世界中で起こっていて、実は日本人も70年前、同じようなことを中国とか韓国にして、それこそ満州国というのを作って…。
 
高橋:同じですよねー、うんうん。
 
鈴木:パレスチナにイスラエルを作るのと同じですよね。そういうことけっこう忘れちゃうんですよね。
 
高橋:私も戦争を経験した世代の先輩方に、ふとした時に感想で、「満州と同じだな、おれは満州から帰ってきたんだけどな」って言われて、その時にやっぱり初めて気づかされましたよね。
 
鈴木:ぼくはこの映画で感じてもらえるかわからないけど、遠い世界の話ではなくて、自分にもそういう可能性があるっていう目で見てもらえると、自分にも関係ない世界の話ではないとわかるんじゃないかな。今、日本だってかなりイスラエル化してますよね。
 
高橋:うん。右傾化してますよね。
 

◎「平和イベントですか?ちょっと偏ってらっしゃいますね」

 
鈴木:この九月とかもイベントがあるんですけど、こういう公共の場を借りる時に「平和イベントですか?」って言って、引いてしまう自治体ってけっこうあるんですよね。ぼくが小さい頃、平和イベントって言ったら、「いいことしてるね」ってことだったと思うんですけど、今だと「平和イベントですか、ちょっと偏ってらっしゃいますね」みたいな(笑)。
 
高橋:平和を語る=左翼みたいな。
 
鈴木:そうです。左翼、パヨクとか言われて(笑)。ぼく、右翼も左翼もなんにもないんですけどね。それってイスラエルと同じなんですよ。イスラエルって全員兵役あって、軍需産業で成り立ってて戦争やらないとまわらない国だから、それに異を唱える=非国民みたいな構図がありますよね。日本も「誰も戦争なんて望んでない」って言いながら、政府の言うまま安保法案は通り、秘密保護法は通り、で、普通の人は、それに反対する声を上げられないじゃないですか。それってイスラエルと変わらないですよね。
 

◎Made in Japanの武器で世界の人々が殺される

 
高橋:しかも映画の中で語られているようにね、マージン先生がおっしゃってましたけど、本当に日本が作った武器で世界の人が殺されているっていうのが、みんな聞きたくもないと思うけど、現実なんです。もう「私たちは関係ないです」とは言えないですよね。
 
鈴木:まさにそのことがこの映画を作るモチベーションでした。
 
高橋:あー、そうなんですね。
 
鈴木:けっこう二時間長いと思いますけど、編集がすごく大変で。密着撮影したのは四十日間分で、何百時間の元映像があったので、けっこう気が遠くなるような感じで、何度かくじけそうな時があったんです。だけど、最終的に「作らなきゃ」って思ったのは、やっぱりその武器のことなんですよ。
 
この映画の中でヘブロンという軍隊がいっぱいいる街で、三歳、四歳の男の子ですごくかわいい子がいて、カメラ向けるとすごく笑いかけて来るんです。カメラを覗かせて向こうを見せると、もう大喜びでゲラゲラ笑って延々20~30分遊んでるんです。そうして笑っているうちに急激にぼくは罪悪感でいっぱいになって、「この子、こないだの武器輸出三原則が見直され、武器輸出が解禁されたということは、日本の武器でこの子が死ぬかもしれないんだ」って。これで「笑ったまま帰ったらただの偽善者じゃん」っていうのがあって。知りたくないですよね、みなさん、どうなのかな。
 
武器産業なんて一回足を踏み入れてしまったらもう戻れないですよね。今、儲かることが第一の世の中なので、一回武器を売るっていうことに手を染めると、ぼくもサラリーマンなんですけど、もし、自分が武器を作ってる会社の社長だとしたら、必ず株主総会があって、「来期の売り上げは?予想を立てなさい」って言われるんですよ。それで毎年毎年利益を上げ続けていかないといけないんですよ。そうすると、ひたすら武器を増やして行くことになる。ってことは、「平和になってほしい」じゃなくて「戦争が続いてほしい」になる。しかも戦争がなかったとしたら、翌年の武器が売れないから、売り上げ増にするためには…。
 
高橋:「使うしかない」ですよね。
 
鈴木:っていうことになるんですよね。

 
高橋:だからイスラエルで二、三年に一回“武器の在庫一掃セール”ってパレスチナ人は言ってますけど、古い武器を使って新しく作ったものを補充して全体を入れ替えなきゃいけないんですけど、なんだかんだ言い訳作って、ハマスを挑発して、ハマスからしょぼいロケット弾飛ばさせてからめちゃくちゃに叩くっていうことが繰り返されてるとパレスチナ人の多くが信じていて…。
 
鈴木:ぼくも信じますよ。みなさん、“ガザ紛争”とかいって言葉のイメージからすると、パレスチナのガザの区域とイスラエルがこう戦っているイメージないですか? まっぷたつにわかれて。でも実際は全く違っていて、ガザは完全に隔離されていて、10年前から完全封鎖されている。パレスチナ人は中から出られないんですよ。しかもすごく狭いんです。東京23区ぐらいの広さしかないところに…。
 
高橋:逃げ場のないところに何万発も撃ち込まれる。そりゃ普通の人だろうが、何だろうが関係なく死ぬよって。
 
鈴木:ですよね。これが紛争という言葉だと対等に戦っているイメージがあるんですよね……なんか明るい話ないですかね?
 
高橋:そうですね。ないですかね?

(ここから質疑に入るが、別に感想を書いて頂いているのと、ボリュームの都合から省いた。)
 
質問者1:(中略)…真実を知らしめるのは、いいこと。今後とも期待してます。それからパレスチナというのはビザとかどうなってるんですか?
 
鈴木:要らないんです。
 
高橋:簡単に言うと、占領されてるので、イスラエルに入国できればパレスチナに入れます。イスラエルは日本人なら空港とかで許可をくれます。
 
鈴木:入国審査で「どこへ行くんだ?」って必ず聞かれますけど、「パレスチナ」なんて答えた日には即追い返されるか、別室で五時間拘束されます。答えなくても拘束されることがありますけど。パレスチナへは検問所を越えて行けます。イスラエルに働きに来ているパレスチナ人もいるんですよ。敵対している国同士じゃないんです。ただイスラエルにパレスチナが占領されてるだけなんです。
 
高橋:経済的な従属関係に置かれていて。水と電気を占有されて、安い労働力を提供して、安く作った製品をイスラエルが売るっていう関係なんです。
 
質問者2:すばらしい映画になっていると思います。撮影、編集の苦労を思うと、作って頂いたことにお礼を言いたいです。さきほど、「こんなことをしていて何になるんだろう?」とおっしゃってましたけども、逆にそういう動きがなければもっとひどいことになっていただろうと思います。だから、続ける事によってそれより悪くなることが避けられるんじゃないかと思います。…(中略)…
 
鈴木:さっき、「こんなことして何になるんだろう?」って言ったのを後悔してるんですけど、実は絶望なんかしてないんです。ただ「自分たちだけで何かやっていても仕方ないよな」って思うんです。
 
高橋:そうですよね。みなさんと一緒にやっていかないと。
 

◎何もしないか、アクションを起こすか

 
鈴木:これはちょっとしたお願いです。映画の最後にも流れましたけど、「このまま何もしないか、アクションを起こすか」みたいな話です。ぼくは「何もしない」っていう選択もありだと思いますけどね。もし何かしたいっていう方がおられたら、別に一緒にアースキャラバンやってほしいとかじゃなくて、たとえば家に帰って、奥さんとか旦那さんに「パレスチナって悪い人たちだとばっかり思ってたけど、そんなことないみたいよ」って話すとかね。
 
あと、イスラエルのことを応援してるところっていっぱいあるんですよね。イスラエルがパレスチナを叩くのに資金を出している企業がたくさんあって、ちょっといま具体例を上げませんけど、「ボイコット・イスラエル」と検索すると、たくさん出てきます。
 
高橋:みなさん、よーく知ってる企業ばっかりです。
 
鈴木:名前は上げませんけど、○○○とか。コーヒーを飲むときは○○○じゃなくて◎◎◎に行くとか、そういうこともできることの一つだと思うので、とにかくパレスチナがテロリストだからやられてるんじゃないっていう真相をみんなが知れば変わると思うので、是非伝えてほしいなと思います。
 
あと、今日もたくさん集まって頂いたんですけど、この中から一人でも二人でも上映会を開いて下さると、この会場のまた倍の人たちが知ることになるんです。それを続けて行くと、意外にいけちゃうんじゃない?ってぼくは楽観してるんですけど、今日は比較的規模が大きくて、普通の家みたいなところでやることもあって、10人ぐらいでやることもあるので。
 
高橋:私は最小三人でやったことあります。人の家でプロジェクター借りて。
 
鈴木:是非、どこにでも行きますので、上映会を開いて頂けると助かります。今日は長々とありがとうございました。


ページ
TOP