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映画「BE FREE!」感想 エルサレム在住経験者の方

2017/11/10(金)
この映画には心に響く様々な『メッセージ』がちりばめられていました。 
もっと多くの方々に映画を観て〈感じて〉頂き、まずはイスラエル、パレスチナに興味を持って頂く事。そしていずれは現地へ足を運ぶきっかけ(又は何かの行動を起こすきっかけ)となったら素晴らしい事ですね。
自分の目で見て感じる事はとても大切な事だと思います。捉え方感じ方は人それぞれですから。
 
私は2002~3年にかけて約1年エルサレムに住んでいました。映画を観ていて一気に記憶が蘇ってきましたが、映画とシンクロする場面も!
 
《百聞は一見にしかず》ですよね、本当に。今まで得ていた情報がどれほど現実とかけ離れていたか。。
 
当時の思い出話しになりますが、、、もし今後何かのお役に立てばと、思いつくまま記させていただきます。↓
 
・パレスチナ人 = イスラム教徒、と思ってる人が殆どではないでしょうか?
 
私もそうでした、イスラエルに行くまでは。
キリスト教徒やユダヤ教徒のパレスチナ人もたくさんいます。
実際、旧市街の中にあるキリスト聖墳墓教会の門を毎日開ける役目を担っているのは、パレスチナ人でした。
 
・紛争は、宗教の問題と言ってしまえばシンプルでもっともらしいですが、そうではない事は歴史を振り返れば自ずと見えてくるのでは、、、と思います。世界史で習いましたよね?
 
まずは関心を持って『もっと知りたい!』と思う事が重要ですよね。数行数分の情報だけでは到底伝えきれない長い歴史が背景にあります。
映画は、今まで中東問題に無関心だった人達に関心を持ってもらえるきっかけを与えるものになると思います。
約2000年前にローマ軍によってユダヤ人はイスラエルの地を追い出されました。そこから流浪の民となり世界中に散らばり、どこへ行っても差別と迫害の運命でした。
ユダヤ人にとってみれば、『元々自分たちの土地だったんだ、それを取り戻してるだけだ、今はローマ人ではなくたまたまアラブ人が住んでいたので彼らに出て行ってもらうだけだ、』という主張。
 
イスラエル軍の入隊式はマサダで行います。マサダとは、死海近くにある断崖の岩山で、ローマ軍に包囲されながらも知恵を絞りそこでなんと7年も籠城していた、ユダヤ人にとっての聖地です。
 
兵役でまず最初に行う訓練は、マサダに登り『決してマサダを忘れるなー!!二度と繰り返すな!!』と共に誓い合う事だそうです。二度と流浪の民となるまい、我が国土を奪われまい、という固い決意です。
 
現在は世界遺産に登録され多くの観光客が訪れています。私はロープウェイではなく自分の足で登りました。本当は行きたくない兵役で入隊したイスラエル人の若者が、入隊の日、岩砂漠の断崖をどんな思いで登るのか、そんな事を考えながら。
 
・イスラエル兵は強大な軍事力の下で、我が物顔で銃を片手に闊歩してると思いますか?
 
ニュース映像に映るのは、ガザや西岸地区の検問所で銃を構える兵士達ばかりかと思います。
実生活では、、、他国では考えられない事ですが、街中では非番の兵士が軍服着て肩にマシンガンを掛けて、奥さんと一緒に赤ちゃんが乗るベビーカーを押してる姿をよく見かけました。
本音は、兵役に行きたくない人が殆どだと思います。家族と幸せに暮らしたい、皆そう思ってるはずです。
 
私が日本人とわかると片言の日本語で話しかけてくるイスラエル人が結構いました。
聞けば、多くの若者は兵役が終わると何の為に生きてるのか…と思い悩み、自分探しの旅に出るそうで、日本は人気の国だそうです。いくつもルートがあるらしく、ある女性は、「麻布十番に10人くらいで滞在できる部屋があり、そこに滞在していた。入れ替わりで次々と兵役終えたイスラエル人がやって来る。」と話していました。上野や大阪でブランドコピー品を扱うイスラエル人のストリートベンダーが逮捕されたというニュースはたまに見聞きしてたけど、彼らも人生悩んで国外脱出した類だったのでしょうね。
 
・子供を持つ親たちは、「我が子を兵役に出したくない、心配で仕方がない、帰って来ても何をやったか詳細は決して聞かない」と言ってました。
 
またあるイスラエル人ご夫婦は、「私たちは子供は作らない。こんな世の中に生まれてきても幸せではない。かわいそうだ。」と言っていました。旦那さんの腰にはいつもピストルがささっていました。。
 
・映画に出てきた旧市街のガイドさんのように、心に傷を負ってしまうイスラエル人は実際にものすごく多いです。
 
韓国やタイなども兵役はありますが、イスラエル軍は、本当の戦闘を行っています。実際に人間に向かって銃口を向ける機会が圧倒的に多いからなのでしょうね。アメリカのイラク帰還兵が病んでしまう、自殺が多いのも当然です。同じです。悲しいことですね。
 
また、イスラエルは女性でも兵役があります。
イスラエルでは、何度も兵役(予備役)があるので、もう二度と行きたくない人(病んでしまった人)は、オーソドキシーになる道を選ぶ人もいます。
オーソドキシーとは、超厳格なユダヤ教徒です。男性は、黒服に身を固め大きな帽子を被り、もみあげをクルクルと長く伸ばしているアノ人達です。既婚女性は、頭を坊主にしておかっぱのウィッグをかぶらなければなりません。
彼らに兵役はありません。。。彼らの仕事は《祈る事》だけなのです。
余談ですが、彼らは避妊をしてはいけないので皆さん子沢山です。どんどんユダヤ人口が増えていきます。そして彼らの 生活は政府が面倒みています。
他にも心に傷を負っているイスラエル人は大勢います。
・映画の中のドイツ人のお話(まずはイスラエル人を癒す必要がある)で思い出した事。↓
 
アウシュビッツで両親や親戚を失い、更に旦那さんのお母さんはアウシュビッツからの生還者というユダヤ人女性の方の複雑な思い= 
 
『平和を望んでる。戦争は繰り返してはならない。憎しみなどは捨てなければならない、わかってはいるけど、どうしても私はドイツ車には乗る事ができない。。。』
 
彼女の外出はほぼマイカーを運転。なぜならば、イスラエルのタクシーやバスの殆どがメルセデスベンツなのです。ドイツは戦後何十年もイスラエルに補償をしています。車もその一部なのでしょうが、車にですら体が拒否反応起こしてしまうユダヤ人がいる事はドイツ人は知らないかもしれませんね。
 
彼女はパレスチナとの和平を望んでいます。でも実際に自爆テロで生活を脅かされている現状では軍がしている事を全て否定はできない。でも我が子は兵役に行って欲しくない…
複雑ですね。
 
・別のイスラエル女性の話。一人で車を運転していた時に前方のバスが自爆テロで吹っ飛んだのです!ものすごい爆音で鼓膜をやられたそうです。無音の車内から彼女が見たものは、フロントガラスにへばり付く血まみれの肉片だったそうです。ワイパーを動かしても取り切れず、嘔吐しながら車を走らせた・・・・・と。
 
彼女は、PTSDを患っていますが、それでもホームパーティーを開き、ユダヤ人とパレスチナ人を招き交流の場を作り、和平への道を積極的に切り開こうとしていました。
 
・また、別のパーティーで知り合ったカップルは、ユダヤ人とパレスチナ人のカップルでした。両親が交際に反対している、と言っていました。周囲から祝福されご結婚されることを願うばかりです。
 
・日本では、ユダヤ人といえば「アンネの日記」や「杉原千畝」のお話しが身近で、どちらかと言うと同情すべき人たちという印象が強いのではないでしょうか?
その上で、イスラエルで問題が起きた時の報道は『現実に今起こった事』しか伝えられないので、自爆テロをやるパレスチナが悪い、という事で片づけてしまうのではないでしょうか?遠い国の出来事ですし、あまり関心もないから。
その一方で。私の夫は、NZと日本人のハーフなのですが、彼の育った環境では(残念なことですが)ユダヤ人に対しての偏見がありました。ですので、映画を観て、イスラエル人も平和的な考え持っている人いるんだね、という感想でした。
 
私は、イスラエルに行く前からイスラエル軍がしてきたことをそれなりに知っていましたので、実際にイスラエルで住んでみて、様々な方と出会いましたが、皆さん笑顔も優しさもいっぱいで普通の生活をしていることにある意味驚きました。慣れない海外生活で困っていた時、彼らの優しさにどれほど救われたことか。救急車で運ばれ入院した時も。。。
 
ユダヤ人が悪い、パレスチナ人が悪い、どちらもその通りだと思います。誰だって善い面もあれば悪い面も必ずあります。それが人間ですから。
 
遠藤さんが最初に出逢ったイスラエル人が「パレスチナ人はテロリストばかりだ」と言いたくなる気持ちもわかります。住んでた家も土地も奪われたパレスチナ人がイスラエルを非難するのも勿論よくわかります。
 
ありふれた言葉ですが、憎しみの連鎖を断ち切る事、それしかないです。シンプルです。
それには、愛と光が必要です。
 
・47年の人生で、イスラエルで過ごした1年はとても有意義な時間だったと感じています。
元々、学生時代から中東問題には興味がありましたので、長年の夢が叶っての事でしたが。
 
9.11の翌年、中東で戦争が起きるのではと誰もが恐れていた最中で、家族や友人は皆行く事を反対していました。実際、イラク戦争が始まり、防毒マスクや緊急時の注射(生物化学兵器用)が支給される事態となりましたが、それでも今でもかけがえのない時間だったと思えるのはきっとイスラエルで出逢った人達の愛に触れる事ができたからだと思っています。
 
人間は誰しも良い面と悪い面を持っています。彼らが私に注いでくれた愛を《隣人》に注いだら、それは何倍にも膨らんで周りに波及してゆくでしょう。世界の2%の人たちの意思をも変えることができたらよいですね。

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