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ヨルダン渓谷について(ガイ・レポートを読む前に)

2018/01/15(月)
「ヨルダン渓谷以前にそもそもパレスチナ問題って?」という方はコチラをざっと一読して下さい。
「パレスチナで今起きていることは世界の縮図です」〜“人権野郎”が見たその現状とは〜
ヨルダン渓谷の状況について経緯がまとまってます(2007年のレポートですが…)
「ヨルダン渓谷を略奪するイスラエル」 アドリ・ニューホフ(コンサルタント/人権活動家)
 
参考:アースキャラバン隊一行が見たヨルダン渓谷の現状(動画)
アースキャラバン2017.8.1. スタディツアー
羊飼いと羊たちを守ろう1
羊飼いと羊たちを守ろう2
以下のテキストは上記1の動画の中の発言を書き起こしたものです。
発言はほぼ現地のイスラエル人活動家ガイ氏によるもの。
 
ガイはパレスチナ農民をイスラエル人入植者たちから守るための団体「タユーシュ」のメンバー。
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〔補足〕下記の地区分類は2007年の情報だが、状況は悪化する一方なので今ではもっと侵略が進んでいる。おおよその目安として。(※図の割合は2000年当時のもの。)
  
ヨルダン渓谷を大きく三つに分けると、以下のようになる。
A地区:パレスチナ管理(渓谷全域の3.5%)
B地区:パレスチナ行政+イスラエル治安管理(渓谷全域の2%)
C地区:イスラエル管理(渓谷全域の44%)
※残りの50%が入植地として占領済み
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ガイ:「パレスチナ自治区にあるヨルダン渓谷には暴力的なイスラエル人入植者(極右)がいて、羊飼いを殴ったり、家畜を殺したりする。」
 
※入植者:パレスチナに移住するイスラエル人。イスラエルは彼らを経済的に支援するほか、農業の便宜を図るなど様々な優遇政策を実施して全面的にバックアップしている。パレスチナに対するこれらの入植政策は国際法に違反している。
 
ガイ:「タユーシュのメンバーが攻撃され、負傷されることもある。付近にはイスラエル軍の基地があったが、今は使われていない。そういう場所に入植者が居座り、入植の拠点とするのが一つのパターンになっている。羊飼いたちはヨルダン渓谷に放牧しに来る法的権利を持っているが、イスラエル警察もイスラエル軍も羊飼いを追い払う。」
 
「追い払われれば家畜は食べる草がないので生存できない。そこはイスラエルの土地ではなく、羊飼いたち個人の土地で権利も持っている。当然羊飼いたちはそこに戻ろうとする。イスラエル軍が来ると彼らはタユーシュたちに対して「ここはミリタリーゾーン(軍の演習地)だから」と言って封鎖しようとする。
が、タユーシュは羊飼いを守るために粘り強く何度でもここに来る。」

ヨルダン渓谷で牧畜を営む農民の証言をガイが通訳しつつ話している。

農民:「2004年にオメールというユダヤ人の農民がここにやってきた。彼が来てすぐに何人かの羊飼いが暴力により負傷し、大切な羊も殺された。それから怖くなってここに来にくくなった。ここに来れなければ羊に草を食べさせるために山を越えなければならないが、越える際にも暴力的な入植者たちと対峙しなければならない。そうしたわけで自然の牧草を与えられないと(飼料購入で)家畜の飼育にとても金がかかり、水も買わなければならないので困っている。水道も電気もない。」

ガイ:「そうした生存のために必要な基本的インフラは羊飼いたちの土地の下を通っているが、それを彼らが使う事はイスラエル政府によって禁じられている。それが現状だけれども、今後は私たちがここにいて放牧を行う権利があることを軍や権力者たちに認めさせようとして活動している。

2013年、ある入植者が来て90匹の羊を盗んだ。そういうことはそこらじゅうで起こっている。珍しいことじゃない。イスラエルの警察も軍も誰が盗ったのか全部知っているが、何もする気がない。ベドウィン(遊牧民)たちはこの窮状を誰にも訴えることができない。我々みたいなイスラエル人が来て、イスラエルの法律も知ってるけど、それを犯すことも厭わずにパレスチナ人の権利を守るためにイスラエル軍や権力機構に対峙することが必要だと考えている。こちらもいつイスラエル当局に逮捕されるかわからないというギリギリのところで活動している※。」

※実際に、一行が日本に帰国してからしばらくして、ガイが警察に暴力を振るわれ、頭を縫うケガを負ったと連絡が入った。

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